医療法人の役員報酬|決め方・相場・議事録の作成まで行政書士が解説
医療法人を設立・運営するうえで、理事長をはじめとする役員の報酬をどのように決めればよいか、迷われる先生は多くいらっしゃいます。役員報酬は、医療法・税法・社会保険の観点から適切に設定・手続きを行う必要があります。本記事では、医療法人の役員報酬の決め方・相場・議事録作成のポイントを、医療関連手続き専門の行政書士が解説します。
1. 医療法人における役員報酬とは
医療法人(社団医療法人)において、理事長・理事・監事などの役員に支払われる報酬を「役員報酬」といいます。個人開業医の場合、事業収益から自由に生活費を引き出せますが、医療法人化後は理事長も役員報酬という形でのみ法人から報酬を受け取ることになります。
役員報酬は以下の点で一般従業員の給与と異なります。
- ・社員総会または理事会で決議が必要
- ・定款または社員総会の決議で定めた範囲内で支給
- ・原則として事業年度中の変更は認められない(税務上の定期同額給与の要件)
2. 役員報酬の決め方・手続き
(1)定款・社員総会での決定
医療法人の役員報酬は、医療法第46条の5の規定に基づき、定款または社員総会の決議によって定めます。一般的には「役員報酬の総額の上限を社員総会で決議し、各役員への配分は理事会に委任する」という方式が採られます。
手続きの流れは以下のとおりです。
- 事業年度開始前(または事業年度開始後3か月以内)に役員報酬額を決定 ↓
- 社員総会で役員報酬の総額上限を決議 ↓
- 理事会で各役員への配分を決定 ↓
- 議事録を作成・保管
(2)税務上の注意点(定期同額給与)
法人税法上、役員報酬が損金(経費)として認められるためには「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。定期同額給与とは、毎月同額の報酬を支払うことを意味し、事業年度の途中で報酬額を変更した場合は、原則として増額分が損金不算入となります。
例外として認められる変更のタイミングは、事業年度開始から3か月以内の改定です。医療法人の場合、決算後の社員総会で役員報酬を改定し、翌月から新報酬額で支給するスケジュールが一般的です。
3. 理事長報酬の相場
医療法人の理事長(院長)報酬の相場は、診療科目・規模・地域によって異なりますが、一般的には以下のとおりです。
| 規模・診療科目 | 月額報酬の目安 |
|---|---|
| 一人医師医療法人(内科・小児科等) | 100万円〜200万円程度 |
| 一人医師医療法人(外科・整形外科等) | 150万円〜300万円程度 |
| 複数医師・複数診療科 | 200万円〜500万円程度 |
※上記はあくまで目安です。実際の報酬額は、法人の収益・税負担・社会保険料のバランスを考慮したうえで、税理士と相談のうえ決定することをお勧めします。
なお、役員報酬を高く設定しすぎると社会保険料の負担が増大し、低く設定しすぎると個人の生活費が不足するうえに税務上のメリットが得られません。収益状況に応じた適正額の設定が重要です。
4. 役員報酬に関する議事録の作成
(1)社員総会議事録
役員報酬の総額上限を決議した社員総会の議事録には、以下の事項を記載します。
なお、招集手続きモレなどの手続き違反があれば総会決議が無効となるリスクがあるので、かならず専門家に相談しましょう。
- 開催日時・場所
- 出席社員数・議決権数
- 議長・書記の氏名
- 決議事項(役員報酬総額の上限額)
- 決議の結果(賛成・反対・棄権の数)
- 議長・出席理事の署名または記名押印
(2)理事会議事録
各役員への配分を決定した理事会の議事録には、以下の事項を記載します。
- 開催日時・場所
- 出席理事・監事の氏名
- 議長の氏名
- 決議事項(各役員の報酬額・支給開始月)
- 決議の結果
- 出席理事・監事の署名または記名押印
議事録は医療法上の書類として保管義務があります(医療法第51条の2)。都道府県への事業報告書提出時に参照されることもありますので、正確に作成・保管してください。
5. よくある質問
Q. 理事長が配偶者に役員報酬を支払うことはできますか?
医療法人において、配偶者が理事等の役員に就任している場合、役員報酬を支払うことは可能です。ただし、業務実態のない「名目上の役員」への報酬支払いは税務上否認されるリスクがあります。実際に業務を行っていることを証明できるよう、業務内容・出勤実績等を記録しておくことが重要です。
Q. 事業年度の途中で報酬を変更できますか?
税務上の定期同額給与の要件から、原則として事業年度開始から3か月以内の改定以外は損金不算入となります。ただし、業績が著しく悪化した場合など「業績悪化改定事由」に該当する場合は例外的に認められることがあります。詳細は顧問税理士にご相談ください。
Q. 役員報酬と退職金の関係は?
医療法人の役員退職金は、在任期間・最終月額報酬・功績倍率をもとに算定される「役員退職慰労金」として支給されます。退職金規程を事前に整備しておくことで、退職時の税務リスクを軽減できます。
6. まとめ
医療法人の役員報酬は、医療法・税法・社会保険の3つの観点から適切に設定・手続きを行う必要があります。特に議事録の作成・保管は都道府県への報告書類や、のちの紛争化リスク対応のため、正確な対応が求められます。
役員報酬の決定手続きや議事録の作成について不明な点がある場合は、医療関連手続き専門の行政書士にご相談ください。
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行政書士イシカル法務事務所では、医療法人の設立から運営サポートまで、医療関連手続きに特化した行政書士が対応いたします。役員報酬の決定手続き・議事録作成・都道府県への届出など、お気軽にご相談ください。
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