【2021年版】医療法人制度の知識。設立と手続き等を解説

医療法人設立

医療関係者であれば良く耳にする「医療法人」ですが、様々な形態があったり、今はもう設立できないものがあったりと制度が複雑で分かりにくいですよね。

今回は、”医療法人について”見ていきたいと思います。

 

そもそも医療法人とは?

医療法人とは、病院や診療所、介護老人保健施設の開設を目的として、医療法に基づき設立される法人のことをいいます。

医療法人は大きく分けると以下の3つに分類されます。(分かりやすくするため、おおまかに分けてご説明します)

「持分の定めのある社団医療法人」
「持分の定めのない社団医療法人」
「財団医療法人」

ただし第5次医療法改正により、2007年4月以降は「持ち分の定めのある社団医療法人」は設立できなくなりました。
現在は、持分のない”拠出金型医療法人”を設立することが一般的です。

 

医療法人化によるメリット

 

診療所等の医療機関を医療法人化すると、ドクター(開設者、管理者を含む)への報酬(給与)は、医療法人から給与や役員報酬として支払われることになります。

個人開設の医療機関の場合は、収入から支出を差し引きした残額が所得となり、その所得に課税されますが、医療法人から給与として報酬を受けることで、”給与所得控除”を受けることができるので、同じ額の報酬を得る場合、医療法人から給与や役員報酬として支給した方が節税効果が期待できます。

(医療法人側も、ドクターへの給与や役員報酬を”経費”として計上できるので、節税効果が期待できます。)

 

加えて、通常の給与よりも税制面で優遇される”役員退職金”を受け取ることができることも節税に繋がります。

(正確さを犠牲にして分かりやすく書くと、退職金は”退職金の額の1/2”しか課税対象にならず、退職金以外の報酬などとは分離して課税されるため、すぐに使わないお金は退職金として貯金しておくことで所得税を抑えることができます)


また、世代交代の際には、医療法人化しておくことでスムーズに医療機関を引き継ぐことができます。

(個人診療所の場合、一度診療所を廃止し、診療所を承継する医師が新たに診療所を開設することとなるため、場合によっては”診療ができない空白期間”が生じるリスクがあります)

その他、医療法人化によって、
分院の開設(個人医師の場合、1か所の診療所しか開設することができません)や介護老人保健施設を開設したり、附帯義務として有料老人ホームや
訪問看護ステーションを開設するなど、事業の拡大も可能となります。

 

医療法人化によるデメリット

医療法人にすると良いことづくめ、、という訳ではなく、少なからずデメリットも生じます。

医療法人化のデメリットとしてまず挙げられるのが、”運営管理の複雑化”です。


医療法人設立手続き自体が煩雑な上、設立後も毎年、都道府県に事業報告を行ったり、資産の変更登記を行う必要があります。

また、年に2回の定時社員総会や理事会を開催したり、年に数回、理事長が理事会に自己の職務執行状況を報告することが義務づけられているため、関連書類を作成する手間も増えます。

(これらはあくまで最低限行わなくてはならないことで、事業状況によっては適宜、臨時社員総会などを開催する必要もあります)

複数の医療機関を開設する医療法人の場合は、それぞれの医療機関の管理者を医療法人の理事に加入させる必要があり、管理者の交代があるたびに、都道府県などに”管理者変更届(及び社員総会議事録など)を提出する必要があります。

 

さらに、医療法人になると、理事長などの役員をはじめ、全従業員(加入要件を満たす方)を社会保険と厚生年金へ加入させ義務が生じるため、社会保険に未加入だった医療機関にとっては、費用負担が増大します。

(ただし、医療法人化までに医師会に入会し”医師国保”に加入している場合は、例外的に社会保険に加入しなくても良い場合があります。)

 

もう一つ、医療法人化のデメリットとして挙げられるのが、”医療法人の解散時に医療法人に残っている財産など(残余財産)は国等に帰属するため、理事長であっても残余財産の分配を受けることができない”ということです。
持分あり医療法人を除く

ただし、基金拠出型医療法人の場合は、医療法人が解散する場合でも残余財産があれば基金として拠出(出資)した額は返還される可能性があります。

 

医療法人設立の流れと主な手続きについて

次に医療法人設立の流れと必要な手続きについて説明いたします。
(都道府県により手続き内容が異なることがあるため、あくまでもイメージとしてお読みください)

  1. 都道府県等による”医療法人設立説明会”への参加
  2. 定款(案)の作成(都道府県のモデル定款を参考に作成されることが多いです)
  3. 設立総会の開催(財産拠出の日程との調整が必要です)
  4. 設立認可申請書の作成(場合によっては100ページを超える書類の作成、準備が必要です)
  5. 設立認可申請書の提出(年に2回、5月と11月を締切としている都道府県が多い印象です)
  6. 設立認可申請書の審査
  7. 医療審議会への諮問・答申
  8. 設立認可書交付
  9. 設立登記申請書類の作成・申請(ご自身で行うのが難しい場合、司法書士が代理申請してくれます)
  10. 登記完了(医療法人設立)
  11. 都道府県へ登記完了届を提出
  12. 医療法人へ財産拠出(医療法人名義の銀行口座を開設)
  13. 医療法人診療所開設許可申請
  14. 医療法人診療所開設届作成、提出
  15. 保険医療機関指定申請(遡及指定申請)
  16. 旧診療所の廃止手続き(保健所、地方厚生局、市町村※公費指定など)

医療法人化に必要な主な要件

医療法人を設立するには、非営利の原則や医療法人の永続性を守るため独自のルールが設けられており、いくつかの要件を満たす必要があります。

医療法人を設立する要件は以下のとおりです。

①原則として、社員(株式会社でいうところの”株主”のようなものです)3名以上、役員として理事3名以上、監事1人以上を置くこと。
※監事は、”医療法人と取引関係に無い人でなくてはならず、法人の職員や理事長の親族は監事に就任できない”とされている都道府県が多く、これが医療法人設立のハードルとなることが多いため、よく検討しておくことが必要です。

②1箇所以上の病院・診療所・介護老人保健施設の設置(医療機関等を開設しない医療法人は開設することができません)

③医療行為に必要な設備・器具の確保(個人診療所で使用している医療機器などを法人へ拠出するか売買するなどして、医療法人が医療行為を行えるようにすることが必要です)

④設立後2カ月分の運転資金が現預金で確保されていること(現預金で2か月分の運転資金を確保できない場合、診療報酬の未収金を拠出することができる場合があります)

医療法人化に必要な期間

医療法人を設立するためには、都道府県が定める期間中に申請を行うことが必要です。
(ほとんどの都道府県で”仮申請”を行うことを求められており、この仮申請には受付期間が定められていることがほとんどです。)

※概ね5月と11月に仮申請の期限が設定されていることが多いですが、医療法人設立の提出書類に含まれている”前年度の確定申告書”の準備がギリギリになってしまうので、5月締切分はあまりおススメではありません・・・

受付期間内に仮申請を行わないと本申請を受け付けない、としている都道府県が多いです)

もしも仮申請の受付期間内に仮申請をしなかった場合は、次回の受付期間まで設立申請ができなくなります。

申請から認可までの期間は都道府県によって異なりますが、仮申請前の説明会から認可書交付まで概ね半年程度かかります。

医療法人化は自分で行える?

医療法人設立の手続きは、もちろんドクターご本人が行うことができます。しかし、医療法人を設立するためには、定められた期間の間に100ページを超える書類を作成し、各所で様々な手続きを行う必要があります。

また、提出する書類が多いだけではなく、提出期限が短いこともあり、書類の修正などで提出期限に間に合わない可能性もあります。

専門家に依頼するかご自身で行うかは別として、医療法人の設立は、時間の余裕を持って準備していくことが重要です。

(記事:板東)

まとめ

今回は医療法人設立について取り上げました。

「医療法人を設立したいけど忙しくて時間が取れない」

「専門家に意見を求めたい

といった場合は、お気軽に当事務所へご連絡ください。

医療関連手続きのみを取り扱っている、医療関連手続きの専門家が、医療法人設立をサポートいたします。

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