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美容クリニック開業をめぐる規制の動き~ 医療法改正と「直美規制」の行方 =

美容クリニック開業をめぐる規制の動き
― 医療法改正と「直美(ちょくび)規制」の行方 ―

近年、美容皮膚科や美容外科などの開業が全国的に増加しています。一方で「美容クリニックの開業が規制される」といった情報が出回っており、事実関係や今後の見通しについての問い合わせが増えています。本稿では、厚生労働省等での公的な議論の状況と、想定される法改正の流れ、および開業・法人設立を検討する際の実務的な注意点を分かりやすく整理します。

1. 現在の状況:厚生労働省での検討が進行中

厚生労働省では「美容医療の適切な実施に関する検討会」などで、自由診療分野(美容医療)の安全確保や情報提供の在り方について議論が続いています。議論の主な論点は次のとおりです。

  • ・医療広告規制や表示の明確化
  • ・無診察施術やカウンセラー主導の契約に対する対応強化
  • ・美容医療機関への定期報告制度や立入検査の導入
  • ・医療事故・苦情対応体制の整備義務化

これらは現時点で「開業そのものを禁止する」ような措置ではなく、開設後の監督・安全管理を強化する方向での検討が中心です。

2. 「直美(ちょくび)」問題とは

「直美」とは、初期臨床研修を終えた直後に保険診療をほとんど経験せず美容医療に転じる医師を指す俗称です。問題視される理由は主に以下です。

  • ・全身管理や救急対応などの基礎的臨床経験が十分でないまま施術に従事するリスク
  • ・若手医師の自由診療分野への集中による地域医療の担い手不足(医師偏在)
  • ・美容医療での事故・トラブル時の対応力や教育体制の不足

このため、一部の医療団体や行政では「直美的なキャリア選択を抑制する必要がある」との議論が出ていますが、現行法で直ちに規制されているわけではありません。

3. 「直美規制」や開業規制が導入される可能性

提言や検討資料では、次のような制度案が論点になっています(あくまで検討段階のアイデアです)。

  • ・初期研修終了後、一定期間は保険診療に従事することを促す仕組み(または義務化)
  • ・美容医療に従事する医師向けの追加研修や技術認定制度の導入
  • ・医師偏在是正の観点から自由診療への過度な集中を抑える政策

なお、これらを実効的に導入するには医療法等の改正が必要となる可能性が高く、法改正の可否や内容次第で実務的影響は大きく異なります。

4. 医療法改正が必要な場合の典型的なプロセスと期間

法改正を経て制度化する場合、一般に以下の段階を踏みます。所要期間の目安も併記します。

段階 内容 期間の目安
① 有識者検討会・審議 論点整理、報告書作成 約6〜12か月
② 社会保障審議会等での取りまとめ 制度化の方向決定 約3〜6か月
③ 法案作成・閣議決定・国会提出 条文作成・与党調整 約3〜6か月
④ 国会審議・成立 通常国会または臨時国会で審議 約1〜3か月
⑤ 施行準備 政省令・通知作成・周知 約6〜12か月

合計目安:最短でも1年半、通常は2〜3年程度。検討開始から施行まで数年を要するのが一般的です。

5. 実務上の留意点

現時点で直ちに開業が禁止される状況ではないものの、将来的な制度強化を見据えた準備が重要です。

  • ・医師の経歴、研修実績を明確に記録、提示できる体制を構築する
  • ・カウンセリング、契約、術後対応のプロセスを明文化し、従業員教育を行う
  • ・医療広告の表示や説明資料を法令、ガイドラインに適合させる

これらは将来の届出義務や報告義務、監督強化に備えるうえで有効です。

6. まとめ

現時点では、厚生労働省で「美容医療分野の監督強化」が公的に議論されている一方、開業を直ちに禁止・許可制にするような法改正は未確定です。仮に法改正が行われる場合でも、施行までに通常数年を要する見込みです。

美容クリニックの開業や医療法人設立を検討されている方は、今後の法改正動向を注視するとともに、上記のような実務的準備を早めに進めることがリスク管理上有効です。

参考(公的資料)
厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」などの公表資料・議事録。
(出典:厚生労働省、社会保障審議会、日本病院会 等)

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著者:行政書士イシカル法務事務所 代表行政書士 濱崎 真悟

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