Columnコラム

医療法人を株式会社が買収するメリットと手順を徹底解説

医療法人 株式会社化

近時、株式会社など、これまで医療に携わったことのない業種から、”医療機関を経営したい”というご相談が増えてきました。

巷では、株式会社が医療法人を経営するための方法などの情報が見受けられますが、果たして本当に株式会社が医療法人や医療機関を運営することは可能なのでしょうか。

先に結論から申し上げますと、医療法人は非営利性が求められるため、株式会社が医療法人買収したり、医療機関を経営することはできません。

しかし、近年では様々な方法を駆使して、株式会社が医療法人の経営に関与するケースが増えてきているように思います。

関与の仕方によっては、医療法人制度の大原則である”非営利性”が担保できず、最悪の場合、医療法人の解散勧告などが出る恐れがあるため注意しましょう。

医療法人の非営利性について

医療法人は、医療法に基づき設立される法人であり、その運営には非営利性が求められます。(医療法第7条)

この非営利性とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、剰余金を社員(株主的意味の社員)に配当してはいけない、という意味です。

剰余金が生じた場合、スタッフの人件費や設備投資に充て、医療サービスの質の向上を図ることが求められます。
このため、株式会社のように株主(=社員)に利益を分配することはできません。

株式会社が医療法人の社員になることはできない

医療法人の社員になる資格については、厚生労働省の通達によって以下のように規定されています。

第1 医療法人の機関に関する規定等の内容について
2 社員総会に関する事項について(法第46条の3から第46条の3の6関係)
(5) その他
社団たる医療法人の社員には、自然人だけでなく法人(営利を目的とする法人を除く。)もなることができること。
引用:厚生労働省「医療法人の機関について」

自然人(人間)だけでなく法人も医療法人の社員になることは可能ですが、営利法人である株式会社が直接医療法人の社員になることはできないとされています。

株式会社が医療法人に関与する方法

上記のとおり、株式会社は医療法人の経営に直接関与することはできません。

また、直接的な関与であったとしても、実態的に直接の関与と同視されるような場合は、医療法人に対して行政指導を受ける可能性が高くなります。

ここで、間接的な関与だとしても行政指導を受けるリスクがあるケースをご紹介します。

①経営権の取得

医療法人の社員に、”株式会社の関係者”が就任するケース。
前述のとおり、営利法人たる株式会社は直接的に医療法人の社員となることはできませんが、株式会社の株主等の自然人であれば、医療法人の社員となることが可能です。

医療法人の社員は、出資や拠出額によらず1人1議決権を持ちますので、株式会社の株主等が医療法人の社員の多数を占めれば、事実上医療法人の経営を掌握することができてしまいます。

ただ、このよう場合に、医療法人のためではなく自身の株式会社のために取引などを行うと、背任等の罪に問われたり、そのような取引で医療法人に損害を生じされた場合は賠償責任を負わなければならない可能性があるため、安易にこのような形で医療法人経営に参画するべきではありません。

医療機関の経営などに精通し、営利法人の株主等であっても医療法人に社員に迎えることが医療法人にとってメリットが大きい場合は、各種法令や定款規定を遵守し、非営利性を徹底したうえで迎える必要があります。

②MS法人を設立し間接的に医療法人を経営する

つぎに散見されるケースとして、MS法人(メディカル・サービス法人)を設立し、その法人が医療法人の経営に関与するケースです。

MS法人とは、医療機関の運営に関わる事業(広告運用、事務委託、清掃委託、給食委託など)を行う法人で、形態としては株式会社や合同会社などが一般的です。
(「MS法人」は法律上の呼称や分類ではなく、いわゆる通称です)

MS法人は、適切に運用すれば、医療法人の経営をサポートすることができ、メリットが大大きな法人ですが、使い方を間違えると前述のような問題が起きかねません。

また、医療法人からMS法人へ業務委託などを行い利益を挿げ替える行為については、役員への配当と同様の行為(配当類似行為)とみなされる恐れがあり、その場合は非営利性が担保できないとして医療法人に対し解散命令が出たり、挿げ替えられた利益分の補填を求められることがあるので注意が必要です。

医療法人が直接行えない事業(医療法人は法律等で定められた事業しか行えません)をMS法人が実施することで医療法人にとってメリットが出る場合などに限定して、MS法人の活用を検討しましょう。

一般社団法人を設立し医療法人の社員になる

最後のケース(他にもいろいろと問題のある事例がありますが、スペースの都合上割愛させて頂きます)は、一般社団法人が医療法人の社員となる方法です。

一般社団法人は、非営利型の法人であり(役員構成など制限あり)、理論上は医療法人の社員となることが可能です。
ただし、法人が社員となるケース自体がレアであるとともに、非営利性を損ねるリスクがあるため、都道府県によっては非営利型一般社団法人であっても社員に就任するのは適切でないと指導されることも考えられます

そもそも、非営利型の一般社団法人であれば、自ら医療機関の開設主体となることが可能であるため、医療法人の社員になるメリットはあまりないように思われます。

最近では、借入時の負担軽減や永続的な医療機関経営を目的として一般社団法人での診療所開設をご検討されるケースも増えてきています。

別の記事でもご紹介していますが、一般社団法人での診療所開設許可は、申請から許可までに要する期間が読み辛いことと、地域によっては許可がおりにくいところがあるため、計画段階で許認可専門の行政書士などにご相談頂くのが良いと思います。

医療法人のM&Aや医院承継手続きのご相談はイシカル法務事務所へ

このように、医療法人を株式会社が直接的に経営することはできないため、安易に医療法人の買収などの情報に飛びつかないようにしましょう。

医療法人は原則として売買が禁止されており、場合によっては”譲渡対価を支払ったが、その後の許認可が下りない”ということに発展しかねません。

医療法人のM&Aや医院承継手続きについてお悩みの方は、イシカル法務事務所にご相談ください。
医療関連手続きのみを取り扱っている、医療関連手続きの専門家がサポートいたします。

 

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