Columnコラム

医療法人の承継手続きと流れ、スムーズに進めるためのポイント

医療法人 承継 手続き

院長の高齢化や後継者不足などの問題が深刻化する中、医療機関の存続・承継問題はますます重要な課題となっています。

特に、医療法人の承継手続きは複雑で、多くの法的・税務的な要素が絡み合います。

本記事では、医療法人の承継手続きの基本的な流れと、スムーズに進めるためのポイントについて詳しく解説します。

事業承継とは

事業承継とは、既存の診療所を新たな経営者(個人医師・医療法人など)が引き継ぐことを指します。

既存の患者や設備、スタッフをそのまま引き継ぎができるため、新規開業に比べて開業資金を抑えることができ、内装工事等や医療機器の導入が最小限となるため、スムーズな開業が期待できます。

事業承継には親族間での承継と第三者への承継の2種類があります。

事業承継手続きの流れ

事業承継に関する手続きの流れを説明します。

専門家に相談・依頼

事業承継の手続きは、既存診療所の廃止と新規診療所の開設を同時に行う形となり、また、施設基準等の引き継もあるため複雑になりやすく、医師が一人で行うのは難しいため、医療機関の事業承継に詳しい専門家に相談することが重要です。

行政書士や弁護士、税理士などの専門家が、適切なアドバイスを提供し、スムーズな承継をサポートしてもらいましょう。

譲渡対価の評価・価値算定

次に、譲渡対象となる診療所の評価と価値算定を行います。
診療所が保有している資産や収益性、立地条件などを総合的に評価し、適正な譲渡価格を算出します。

最近では、実質営業利益(営業利益+診療に従事しない役員の役員報酬+院長等に由来する費用)の3年分+資産(簿価)程度の価格となることが多い印象です。

承継先の選定

承継先の選定は、診療所の将来を左右する重要なステップです。

親族間での承継か、第三者への承継かを決定し、適切な候補者を見つけます。

候補者探しでは、M&A業者などの活用もしていきたいところですが、業者によっては高額な着手金(数百万円)を取っておきながらまともな承継先を紹介しないというところもあるので、大手だからといって飛びつかず、着手金の支払が必要な場合は、月に何件程度紹介してくれるのか、何年間サポートしてくれるのかなど、条件をしっかり確認しましょう。

基本合意書の締結

承継先が決定したら、基本合意書を締結します。これは、承継の基本条件やスケジュールを明確にするための書類で、弁護士や許認可を担当する行政書士が作成することが一般的です。

DD(デューデリジェンス)

承継の際、診療所の財務状況や法的リスクを詳細に調査するDD(デューデリジェンス)を行うことで、承継後のリスクを最小限に抑えることができます。

一般的には、弁護士がメインとなり、税理士や社労士などがフォローすることが多いです。

譲渡契約書の締結

最後に、譲渡契約書を締結します。
これは、診療所経営権や、財産などを運営権を正式に移転するための契約書です。
基本契約書を作成した専門家が引き続き作成することが一般的です。

診療所承継で行うべき行政手続き

診療所の承継の際には、各種行政手続きが必要です。以下に、個人診療所と医療法人診療所の場合に分けて説明します。

個人診療所の場合(譲渡する側)

譲渡する側は、所轄の保健所に「廃止届」を提出します。
法律上、事案発生後の提出と定められていますが、実際には事前に管轄保健所と協議を行い、提出時期やその他の書類について整理を行います。

(提出物 例)

個人診療所の場合(譲受する側)

譲受する側は、保健所へ「開設届」などを提出し、新たな診療所の運営を開始します。保健所との事前協議が必要な点は前述のとおりです。
こちらも同様に、必要な添付書類を準備します。

(例)

医療法人診療所の場合

医療法人診療所の場合、厚生局や法務局、保健所への届出のほか、都道府県へ届出が必要です。

診療所の承継手続きをスムーズに進めるためのポイント

診療所の承継をスムーズに進めるためには、以下のポイントに注意することが重要です。

早めの準備

承継の準備は早めに始めることが重要です。

特に、手続きについてはローカルルールや公開されていない工程などもあるので、事前に行政書士などの専門家へ相談しましょう。

専門家の活用

行政書士や弁護士、税理士などの専門家を活用することで、手続きをスムーズに進めることができます。

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