Columnコラム

診療所・保険医療機関指定の“新たな制限”議論に備える

診療所・保険医療機関指定の“新たな制限”議論に備える

近年、診療所開設や保険医療機関の指定にあたって、国(厚生労働省)の方向性として「開設・指定を無制限に認める従来の運用」から、地域医療の偏在是正・機能分化を背景とした制限・要件の強化が検討されています。医療法人設立や診療所開設支援を専門とする行政書士の立場から、最新の議論と、実務において押さえておきたいポイントを整理しました。

1.現在の議論状況:指定・開設の“緩やかな自由”から“制約付き”へ

厚生労働省では、「診療所・保険医療機関の適正配置」「地域医師偏在の解消」といった観点から、以下のような議論が進んでいます:

  • ・医師数が十分な地域(いわゆる「外来医師多数区域」)における診療所開設の届出・協議制度の検討
  • ・保険医療機関の指定期間を従来の6年から短縮(例:3年)する案
  • ・保険医療機関の管理者(院長)に対する経験・資質要件の強化
  • ・診療所・病院の機能分化・集約化を促す制度づくり

これらは現時点では法令等として確定したものではありませんが、開設・指定手続きの枠組みが将来的に変化する可能性があるため、動向を注視していく必要があります。

2.想定される制度の方向性

今後検討されうる制度案として、以下が挙げられます(あくまで“案”の段階です):

  • ・新規開設を希望する診療所について、開設予定地が届出対象地域か否かを事前に判断する仕組み
  • ・保険医療機関指定を受けるために、管理者が一定期間保険診療に従事していることを条件とする制度
  • ・保険医療機関の指定期間を短縮し、その間の更新・報告義務を強化する流れ

制度化には法改正・省令・都道府県条例など複数の手続きが必要であり、施行までには数年を要する見込みですが、いわゆる”外来医師多数地域”で開業する場合、早めに検討する必要がありそうです。

3.実務上、今押さえておきたいポイント

クリニック開設実務においては、以下の点を検討段階から意識しておくことが有効です:

  • ・開設予定地の地域区分(外来医師多数区域かどうか)を都道府県の医療計画等で確認する
  • ・従事医師の経歴・保険診療実績を整理し、要件規制に備えた体制を整える(次世代の管理者育成など)
  • ・診療所・医療法人としての「機能」「地域医療貢献」の観点を明確にし、事業計画に落とし込む

4.まとめ

現状では、開設や指定自体が「直ちに禁止される」わけではありませんが、制度の枠組みが変わる可能性は十分にあります。開業・医療法人設立を検討されている方は、しっかりと制度改正動向を注視していきましょう。

なかでも、管理者の要件規制(保険診療実績等)が実施されると、分院展開の際や管理者の急な退職があった際に、管理者の確保が困難になることが予想されまることから、新規開設のみならず、すでに診療所を運営されている先生にとっても他人事ではありません。

そのような事態に備え、今のうちから次世代の管理者候補を育成できるかどうかが、今後の事業展開に大きな影響を与えることになりそうです。

当事務所では、診療所開設・医療法人設立・保険医療機関指定の支援において、最新の行政動向を踏まえた支援を行っています。お気軽にご相談ください

参考・出典

  1. 厚生労働省「第12回 新たな地域医療構想等に関する検討会」議事録(令和6年11月20日)
    「地域の医療需要を踏まえ、診療所の機能分化・再編の方向性を検討する必要がある」
    「医師偏在を是正する観点から、診療所開設の在り方についても議論が必要」
    厚生労働省公式サイト
  2. 厚生労働省「第15回 新たな地域医療構想等に関する検討会」議事録(令和6年12月10日)
    「保険医療機関指定の有効期間を6年から3年に短縮する案が提示された」
    「指定更新の際に、地域医療構想との整合性を確認する仕組みを導入すべきとの意見が出された」
    厚生労働省公式サイト
  3. 内閣府「第3回 健康・医療・介護ワーキング・グループ」議事録(令和5年12月11日)
    「医療提供体制全体を俯瞰し、地域で必要な医療資源を再配置していくことが求められる」
    「開設や指定の在り方を含め、制度全体の見直しが検討課題」
    内閣府公式PDF

文責:行政書士イシカル法務事務所 事務局

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