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医療法人の理事長が亡くなった場合の解散手続きの流れ

医療法人 理事長 死亡 解散

医療法人の理事長が突然亡くなった場合、医療機関の運営や存続に大きな影響を及ぼします。

特に後継者が不在の場合、医療機関を維持できず、医療法人を解散する必要が生じることが多いです。

本記事では、理事長の急逝による医療法人の解散手続きの流れについて詳しく解説します。

医療法人の理事長が亡くなった場合

前述のとおり、医療法人の理事長が亡くなると、後継者問題が生じ、場合によっては医療法人を解散する判断を迫られることがあります。

以下に、承継のパターンとして、親族間承継、第三者承継、解散の三つの選択肢について詳しく説明します。

親族間承継

理事長が亡くなった場合、まず考えられるのは親族間承継です。

親族間承継とは、亡くなった理事長の親族が新たに理事長に就任し、医療法人を引き継ぐことです。

親族間承継の利点は、経営方針や理念を継続しやすい点です。

既存のスタッフや患者も安心感を持ちやすく、スムーズな承継が可能なため、医療法人承継時の第一選択となります。

第三者承継

親族間に後継者が見つからない場合は、第三者承継を検討する必要があります。

第三者承継とは、親族以外の方が新たに理事長を引き継ぐことです。

第三者承継を検討する順番としては、法人で雇用している医師・歯科医師への承継から検討し、次いで法人外部の医師・歯科医師への承継という順番で検討するのがおすすめです。

前者は親族間承継ほどではないものの、法人スタッフや患者とのコミニュケーションが取りやすく、スムーズな承継が期待できます。

外部の医師・歯科医師へ承継する場合の利点は、多様な視点や新しい経営手法を導入できる点にあります。

親族間承継や内部スタッフへの承継の場合、人間関係などの問題で、既存の経営手法から大きく異なる形へ転換することが難しくなるケースも多く見受けられます。

他方、第三者承継では、既存スタッフとの信頼関係の構築や様々な内部調整が必要であり、スタッフからの理解と協力が不可欠です。

解散

親族間承継や第三者承継が難しい場合、医療法人の解散を検討することとなります。

医療法人の理事長が亡くなり、解散する場合に必要な手続き

医療法人の解散手続きは、解散事由によって異なります。

解散事由の取り扱いについては、都道府県ごとに多少ルールが異なるため、
勝手に判断せず、すぐに都道府県へ相談することが重要です。
(解散届で足りると考えて手続きを進めていたら、都道府県から認可が必要と言われ、慌ててご相談にこられるケースがあります)

解散決議後は、債務の弁済や資産の換価、残余財産の処分などを行い、最終的には清算結了の登記を行います。
(登記は司法書士の業務となります)

医療法人の解散手続きから清算の流れを解説

残余財産の帰属先

医療法人の理事長が亡くなり、医療法人を解散する場合、残余財産の帰属先は法人の種類や定款によって異なります。

持分なし医療法人の場合

持分なし医療法人が解散する場合、解散後に残る財産は原則として国に帰属します。

医療法改正により平成19年4月1日以降に新設された医療法人はこちらに該当します。

持分あり医療法人の場合

持分あり医療法人が解散する場合、出資者に残余財産が分配されます。

持分あり医療法人では、主に社員(株主的意味の社員)が法人の持分を有しており、解散時にはその持分の割合に応じて財産が分配されます。

また、分配される財産に対しては所得税が課されることがあるため、適切な税務処理が必要です。
(税務処理については税理士への相談が必要です)

死亡退職時の退職金

医療法人の理事長が死亡退職した場合、死亡退職慰労金、弔慰金、特別功労金などの受け取りが可能となることがあります。

これらの退職金は、税務上、医療法上適正範囲内の額であれば、損金に算入することができます。

死亡退職金

死亡退職金の額は理事長の在職期間や役職に応じて決定されます。

長期間にわたり法人の運営を支えてきた理事長に対しては、相応の退職金が支給されることが一般的です。

功績倍率とは、役員の職責に応じた倍率のことで、理事長の場合、3倍程度を上限とすることが多いのではないでしょうか。

【死亡退職金の計算式 例】
死亡月の役員報酬月額×役員就任年数×功績倍率3.0

弔慰金

弔慰金は、故人を弔い、遺族を慰めるという趣旨で支給される金銭です。

原則として、相続税や贈与税、所得税などが非課税となりますが、一定額を超えた部分は課税対象となることがあるので注意が必要です。

【弔慰金の計算式 例】
業務上の死亡:死亡月の役員報酬月額×36ヶ月
業務外の死亡:死亡月の役員報酬月額×6ヶ月

特別功労金

特別功労者には、一定額の特別功労金を支給できることがありますが、税務上のリスクがありますので、支給を検討する際は税理士への相談が必須です。

まとめ

理事長が急逝した場合、上記のような手続きのほか、関係者への連絡や葬祭など、しなければならないことが非常に多く、また、期限がある手続きもあるため、故人との別れをゆっくり悲しむ暇も無い、といった事態になりかねません。

解散手続きをご遺族で行うのが難しい場合は、専門家のアドバイスを受けることも検討してみてください。

医療法人解散手続きでご不明なことやご心配なことがあれば、イシカル法務事務所にお気軽にご相談ください。

医療関連手続きのみを取り扱っている、医療関連手続きの専門家が、医療法人設立・解散をサポートいたします。

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