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医療法人の解散手続きから清算の流れを解説

医療法人 解散

医療法人の解散の手続きには、様々なルールがあり、都道府県から求められる書類や資料を準備したり、残余財産の処分方法など決定する必要があります。

特に残余財産の処分に関しては、解散の数年前から計画的に実行していく必要があるので、
早い段階で専門家の関与が必要です。

本記事では、医療法人解散の具体的な手続きの流れについて、わかりやすく解説します。

医療法人の解散とは

医療法人の解散とは、その法人格が法律上の存在を終えることを指します。

具体的には、開設している全ての事業所(診療所など)を廃止し、法人としての事業活動が終了することを意味します。

解散の事由はそれぞれですが、例えば、前述した全ての事業所を廃止した場合や、社員(≒株主的意味の社員)の欠乏、後継者の不在などが挙げられます。

解散事由によって、社員総会での解散決議が必要となったり、解散に至るまでの経緯を疎明する資料を準備する必要があります。

多くの都道府県で、申請前に事前協議を求めれることがあるため、書類作成前に都道府県へ解散認可のスケジュールや必要書類の確認を行うことが必要です。

都道府県から解散の認可を受けた後には清算手続き(清算登記や残余財産の処分など)が行われます。

持分なし医療法人の場合、残余財産を社員へ分配することが禁止されているため、解散の数年前から退職金などをどのように支給していくか検討することが必要です。

通常、解散の認可から全ての手続きが完了するまでに1年程度かかることが多いため、解散の希望日が決まったら早めに専門家に相談しましょう。

適切な手順で解散をし、法的トラブルを避け、関係者全員が納得のいく形で法人を終了させることが重要です。

医療法人を解散するケース

医療法人の解散は、経営環境や経営者の状況により避けられない場合があります。

医療法人が解散に至るケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

債務超過

債務超過の状態に陥った場合、医療法人は解散を検討せざるを得ないことがあります。

債務超過とは、法人の負債が資産を上回る状態を指し、これは経営の継続に重大な影響を及ぼします。

債務超過が続くと、医療機関の運営に必要な資金が確保できず、医療サービスの提供が困難になる可能性があります。

このような状況で、最終的には法人の解散という選択肢が検討されます。

後継者がいない

後継者がいない場合も医療法人の解散を検討する要因となります。

医療法人の経営は、医師の存在に依存しています。

原則、理事長は医師でなければならないこと、そして勤務する医師がいなければ運営が成り立ちません。

経営者が高齢化し、引退を考える時期に後継者が見つからない場合、その法人の将来に不安が生じます。

後継者がいないことで、経営の引き継ぎがスムーズに行われず、医療サービスの質の低下や経営の不安定化が懸念されます。

このため、後継者問題は早期に対策を講じるべき重要な課題です。

しかし、適切な後継者が見つからない場合、解散を視野に入れた計画を立てることも必要となるでしょう。

他の医療法人との合併

他の医療法人との合併も解散の一形態として考えられます。

合併は、経営資源の集中や効率化を図るための戦略的な選択肢です。

特に、単独での運営が困難になった場合や、地域医療の強化を目指す場合に有効です。

合併により、医療サービスの提供体制が強化され、資源の有効活用が可能となります。

ただし、合併には両法人間の調整や法的手続きが必要であり、これらを円滑に進めるためには十分な準備と関係者間の協力が不可欠です。

合併後の運営が円滑に進むよう、事前に詳細な計画を策定し、関係者の理解と協力を得ることが求められます。

法律上の医療法人の解散事由

医療法人の解散事由は医療法により定められており、法律に定められている以外の事由による解散は認められません。

第五十五条 社団たる医療法人は、次の事由によつて解散する。
一 定款をもつて定めた解散事由の発生
二 目的たる業務の成功の不能
三 社員総会の決議
四 他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。次条第一項及び第五十六条の三において同じ。)
五 社員の欠亡
六 破産手続開始の決定
七 設立認可の取消し

出典:医療法五十五条

医療法人解散の手続き

医療法人の解散手続きは、解散事由によって異なります。

それぞれの解散事由による手続きの流れを説明します。

1. 都道府県知事の認可が必要になる場合

医療法人が次の事由によって解散する場合は、都道府県知事の認可を受ける必要があります。

・目的たる業務の成功の不能
・社員総会の決議

「目的たる業務の成功の不能」とは、客観的に見て、診療ができない事情になった場合などの状態を指します。

また、社員総会で解散が決議された後は、都道府県知事の認可が必要となります。

これは、医療法人が公的な医療サービスを提供していることから、その解散が地域医療に与える影響を考慮するための措置です。

知事の認可を得るためには、解散の理由やその影響について詳細に説明する書類を提出します。

知事はこれを審査し、適正と認められた場合にのみ認可を与えます。

この認可がなければ、解散手続きを進めることはできません。

2. 都道府県知事への届け出が必要になる場合

・定款で定めた解散事由の発生
・社員の欠亡
・寄附行為をもって定めた解散の事由の発生

上記の事由で解散する場合は、都道府県知事への届け出のみで解散手続きが可能です。

3. 他の医療法人と合併する場合

他の医療法人と合併する場合は、医療審議会の意見聴取が必要となります。

公告

社員総会で解散決議をしたら、、医療法人は解散の事実を公告する必要があります。

認可が必要になる解散事由の場合は、認可を受けてから公告を行います。

公告は一般的に、日本政府の機関紙である官報を通じて行われます。

債権者等の利害関係人への通知

公告と並行して、医療法人は債権者やその他の利害関係人に対しても個別に通知を行う義務があります。

これは、法人の解散によって影響を受ける可能性のあるすべての関係者に対し、解散の事実とそれに伴う手続きについて知らせるためです。

清算人の登記

医療法人の解散において、清算業務を行う清算人を法務局で登記する必要があります。

医療法人が解散する場合は、原則として理事長が清算人になります。

ただし、定款もしくは寄附行為において定めがある場合や、社員総会にて清算人を選任している場合は、その人が清算人になります。

医療法人解散決議後の清算手続き

医療法人が解散を決議した後、法人としての最終的な清算手続きが必要です。

以下に、清算手続きの各項目について詳しく説明します。

現務の結了

解散が決議された後、現在進行中の業務を終了します。

具体的には、患者の診療や新規契約の締結を停止し、既存の契約やサービスを順次終了していきます。

この段階で、職員への通知や患者への連絡を行い、円滑に業務を停止するための手続きを進めます。

債権の取立て

現務の結了と並行して、医療法人は未収の債権の取立てを行います。

これには、未払いの診療報酬や他の未収金の回収が含まれます。

債権回収のためには、債務者に対する請求書の発行や法的措置を講じることが必要となる場合もあります。

債務の弁済

次に、医療法人は負債の弁済を行います。

債務の弁済には、仕入先や取引先に対する未払い金、金融機関からの借入金、その他の未払費用が含まれます。

リース品の返却

医療法人が解散する際には、リース契約を結んでいる機器や設備の返却も必要です。

リース品の返却は、契約内容に基づき、リース会社と協議して進めます。

返却の際には、機器の状態を確認し、必要に応じて修理や清掃を行うことも求められます。

資産の換価

医療法人が所有する不動産や医療機器、備品などの資産を売却して換価する必要があります。

残余財産の処分

清算手続きの最終段階として、残余財産の処分が行われます。

ここで重要なのは、負債と資産のバランスです。

<負債の方が大きい場合>

負債の方が大きい場合、全ての債務を弁済した後にも負債が残ることがあります。

負債の方が大きく、債務を完済できないことが明らかになった場合は、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをしなければなりません。

出典:第五十六条の十

<財産の方が大きい場合>

一方、財産の方が大きい場合は、全ての債務を弁済した後に残る資産を処分します。

この残余財産は、定款や寄附行為の定めるところにより処分します。

上記により処分されない財産は、国庫に帰属します。

出典:第五十六条

清算結了の届出・登記

全ての清算手続きが完了した後、行政機関への清算結了の届出を行います。

最後に、法務局に清算結了の登記を行います。

登記が完了することで、医療法人は法的に解散し、全ての清算手続きが終了します。

まとめ

医療法人の解散および清算手続きは複雑かつ煩雑ですが、適切な準備と情報収集を行うことで、スムーズに進めることが可能です。

本記事で紹介した手続きの流れを参考にすることで、法的に問題のない形で解散・清算を完了させることができるでしょう。

重要なのは、各ステップで必要な書類や手続きを正確に理解し、計画的に対応することです。

また、ご自身で難しい場合は、専門家への依頼をご検討ください。

医療法人解散手続きでご不明なことやご心配なことがあれば、イシカル法務事務所にお気軽にご相談ください。

医療関連手続きのみを取り扱っている、医療関連手続きの専門家が、医療法人設立・解散をサポートいたします。

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